ひとつの定義をしよう。
不自然な寺というのは「坊さんの姿や気配が感じられない」寺のことである。
この定義は、あながちおかしなものではないだろう。拝観受付にせよ境内各所で坊さんの姿や坊さんがいそうな雰囲気を持っているかで「観光寺院」の質がわかる。たとえばH寺は世界にその名を知られた名刹にして我が国の仏教史を彩る大寺である。因みにここの拝観料は1,000円である。所有する文化財保全のためには相当の維持費が必要であるから決して破格の金額ではない(但し、参考として奈良県内最高額の拝観料ではある)。よって境内は手入れもされ、30年前に比べれば寺観は格段に整備され、国宝級の文化財収蔵施設もできている。国内はもとより海外からもわんさかと人が寄せている。人気の寺だと誰もが思うだろう。
けれども坊さんを見かけないのである。
どこに隠れているんだといいたくなるほど、寺に坊さんがいない。
南都寺巡り雑感 其の弐 続きを読む